希望


786  ジャマールさん、サーオ(有難う)!


イスタンブールから始まって、トロイの遺跡を見学してエーゲ海の小さな島アイワルクにに泊り、次の日はエフェソス遺
跡の後、パムッツカレ(綿の城)で寝ました。さらに、3日目はセイジュク・トルコ時代(11世紀〜13世紀)の首都コンヤへ
と行き、4日目はシルク・ロードを走りカッパドキアへ、5日目は共和国の首都アンカラへ走り、その夜の夜行寝台列車・
アナドゥル(お母さんがいっぱいという意味)急行で、イスタンブールのアジア側にあるハイダルパシャ駅に到着後、駅
の前に広がるマルマラ海を渡る連絡船に乗って、ヨーロッパ側のガラタ橋のたもとにやってくると、懐かしのジャマール
さんが待っていました。

ジャマールさんは私たちのバスの運転手であり、堅実な運転で道路が必ずしも観光するのに適しているとは言いがた
い状況下でも、時には事故車も目にしましたが、安全運転で心から信頼できる人でした。無口で、日本人観光団を乗せ
たのは初めてだという、本来なら羊などを飼う山岳民族の出身であり、ベースは地中海に面したアンタルヤだそうです。
そのジャマールさんに感謝して、毎日夕方ホテルへとバスが近づくと、ガイドのファイキ氏(西郷ドンの愛称で皆さんに
好かれた)が音頭をとって、皆さん一斉に'ジャマールさん、サーオ!'とお礼の言葉を言いました。すると、ジャマールさ
んは運転しながら、右手を振って声援に応えてくれました。
6日間で走った距離は、2700キロほどでした。





787  黒と赤の大地と黒と白の海



'エジプトはナイルの賜物'と古代から云われてきました。

ナイル河で定期的に起った増水、氾濫を利用して、灌漑用水として使い、肥えた大地に麦や穀物を育ててきました。ナ
イルの下流のデルタ地帯の土の色をケメト(黒い大地)と呼び、その周辺の砂漠はデシェレト(赤い大地)と言いました。
トルコでは、地中海の海を白い海と讃え、太陽の光に照り映えている姿を形容しました。
黒海の名称の由来は、古代ギリシャ人が雨がよく降り森林地帯の多くある黒海に面した、アナトリア地方に紀元前12世
紀以来、植民地をつくりました。そして、彼らはこの内陸の海の色を黒と呼んだそうです。
地中海と黒海を結ぶマルマラ海は、マーブル(大理石)の海という意味だそうです。
さて、紅海はどうして紅色の海と名前がついたのでしょうか?





788  7不思議は変わっていく、でも7は変わらない


古代世界の7不思議として、紀元前3世紀の人・フィロは次のものを言いました。

1. ピラミッド 2.バビロンの空中庭園 3.アレキサンドリアの大灯台 4.ロードス島の巨像 5.オリンピアのゼウス
像 6.エフェソスのアルテミス神殿 7.ハリカルナソスの霊廟
この時代は、巨大な建造物で人々の目を驚かすものが評価されていたようです。

新世界の7不思議となると、
1. ナスカの地上絵 2.王家の谷 3.ストーンヘンジ 4.万里の長城 5.イースター島のモアイ像 6.聖ソフィア寺
院 7.アンコールワット
誰が選んだのかは分りませんが、アジアや南アメリカ、南太平洋へと旅をして選んでいますので、地理的な広がりがあ
るし、空中へと舞い上がったり地下へと下って、初めて分るものが入っています。

現代の7不思議は
宇宙人やUFOとか、雪男、ネッシーなどの未確認の生き物、失われた大陸とその遺産(ムー大陸、アトランティス、レム
リア大陸など)、超現象(バミューダ海域など)をあげる人がいるそうです。
伝説で語られた場所や未確認な生きもの、科学が未だ突き止めていない原因不明の現象などが、今は関心を持たれ
ているようです。

興味深いのは、何故か7という数字(吉兆とされる)は、昔も今も恐らくこれからも変わらないだろうと思えることです。





789  豊穣女神信仰の伝統あるエフェソス


アジアとは太陽が昇る所という意味があるそうです。

小アジア最大の町であったエフェソスは、最大25万人もの人が紀元前3世紀から紀元前後にかけて住んでいたと云い
ます。古代世界7不思議のひとつと讃えられたアルテミス(月や狩りのギリシャ神話の女神)神殿もありました。今は、僅
か1本の大理石の柱がぬかるみの中に立っているだけで、当時は127本の柱に支えられた壮大な女神神殿が、地中海
の波打ち際にすくーと建ち、遠くから船や陸路でやってくる人々を迎えました。
ここで見つかったアルテミス神の彫刻は、胸から胴にかけていっぱいの乳で飾られていました。体中から栄養たっぷり
の母乳を出し、赤ちゃんたちに充分過ぎるほどの恵みを与えているようです。

トルコのアジア側の大地(英語ではアナトリア)は、アナドゥルといい、'お母さんがいっぱい'という意味だそうです。
元々、この辺りでは地母神キベレを大切に信仰する土地柄でした。大地のもたらす恵みにより、生活していた人達が住
んでいました。
以前、案内してくれたトルコ人女性ガイドが、世界中でアメリカに次いで2番目に多種多様な農作物の育つ国だと云った
のを思い出します。
キベレ(豊穣の地母神)信仰の盛んだった所に、地中海貿易が盛んになり重要度を増したエフェソスの地に、ギリシャ
の狩りの女神アルテミスを祭る壮大な大理石の神殿が、港の傍にできたことは、当時の人々の目を奪い、心を捉えた
ととでしょう。

そして、聖母マリアまでヨハネに伴われて、この地にやってきて晩年を送ったと云われます。生後間もない神の子イエス
を連れてエジプトの地へ逃れたり、息子イエスが死んでからはキリスト教の迫害が始まり、遠く今度はエフェソスの地に
旅してきて、やっと人心地ついたのでしょうか?
後日、聖母と崇められるマリアの一生は、波乱に満ちたものでした。





790  ガイド悲話


トルコの西郷ドンこと名ガイド・ファイキ氏は、友人のガイド氏について、バスの中で語りました。

何時も家を留守にしがちで、一旦イスタンブールを離れトルコ周遊の旅にでてしまうと、1週間から10日は家族に会えま
せん。そんな折、5歳になる息子が朝起きた時、隣に寝ていた友人のガイド氏を指差して、母親にこの人は誰?と聞い
たそうです。そのことがきっかけで、友人はガイドの仕事を辞めたそうです。
私自身も、子供たちが育ち盛りの頃は、家を留守にして海外に添乗することが多く、次女は抱いてやると怖がって大泣
きしてしまった思い出があります。

さて、インドの神話の中に、象の顔をした幸福やお金をもたらすと信じられているガネーシュという神様がいます。
彼は、元々は可愛い顔をした坊やだったのですが、家を長い間留守にしていた父親のシバ神(破壊や踊りを司る人気
の高い神)が、しばらく振りに家に帰ってみると見たこともない子供がいて、父親を見ても分らず粗暴な振る舞いをして
しまいました。シバ神とて、まさか自分の子供とは思わず、怒りに任せて子供の首を切ってしまいました。
後でこのことを知った妻のパーバティは、夫をなじり子供を生き返らせるよう懇願しました。そこで、窮余の一策で最初
に見た動物の首をはねて、その頭を子供の体にくっつけることとなり、象が最初に出会った動物だったという話です。

オーストラリアから日本に1週間ほど休暇でやってきた、20代の白人若者夫婦が満員電車の中で目にしたのは、身動
きし難い揺れる車中で、新聞を食い入るように見ている人や携帯電話に熱中している人、ひたすら目をつぶって寝てい
る人、と思いきや駅に電車が停まると、目を突然にあけ降りていった人もあり、きっと目覚まし時計をポケットに入れて
いるのだろうと思ったそうです。

何時も忙しくしている日本人を見て、そうではないオーストラリア人は、びっくりしてしまったようです。それにしても子供
の寝顔ぐらいしか見てやれない父親や、アルバイトで忙しく食事の支度をしてやれない母親が増えていて、ガイド悲話
は身近になりつつあるようです。







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