希望



621  12番目のイマームが枕元に立つと



イランのイスラム教・シーア派の人は、11人のイマームを正統な人として認めています。

マホメットに始まり義理の息子のアリ、アリの息子2人ハッサンとフセイン、その後の5代から11代までは親から子へと
継がれていき、11代で途絶えています。しかしやがて12番目のイマームがいつの日か現れるのを待っているそうで
す。
現れる場所は、メッカの人々が集うカアバ神殿だそうです。そして最後の審判が行われるそうです。'12番目のイマー
ム・シーア'これがイランの98%の人々が信じる国教です。
16世紀にサファービ王朝を興した初代王の枕元に12番目のイマームが立ち、剣で征服する為の指示を与えたそうで
す。その通りにすると国土が更に広がりました。それからサファービ王朝の国教となり現在に至っているようです。
          



622  インテリがガイドをしている町シラーズ




シラーズの生んだ詩人サーディやハーフェーズの詩を縦横に引用して、話に味付けをしてくれた50歳前後の男性イン
テリガイドが、イランでの最初の町の案内者でした。

この方のお陰で、日本で出発前に聞かされた不安を増長するようなイランの数々の根も葉もない情報を吹き飛ばして
もらい、詩を今も愛する知恵者、人生の達人の国ではないかと考えるきっかけを貰いました。シラーズの町の名の由来
は、近くの遺跡から見つかった4500年もの昔に書かれたタブレット(粘土版)によります。年間降雨量が300ミリという
乾燥した土地柄ですが、春になると周辺に降る雪が溶けて流れ出す水の,地下水脈を利用して井戸を掘り町へと引い
ています。いろんな場所に案内してくれましたが、エラムガーデン(楽園)に代表されるようなペルシャ式庭園は世界でも
高い評価を受けています。惜しげもなく大切な水を庭園に使い、植物や花に優しい対応をしています。ヨーロッパにシェ
ークスピアがいるとすれば、イランにはサーディがいると胸を張って紹介してくれたサーディの格言を2、3述べてみま
す。

人には2つの耳、1つの口があるように2度聞いた上で1度言葉を発しなさい。

頭の禿げた散髪や、病気の医者は信用できない

醜い女はせめて賢くあれ

ハマーン(大衆風呂)では土を石鹸代わりに体に塗るそうです。サーディがある時そのようにすると、バラの香りがした
ので土にあなたはバラかと尋ねると、私は正真正銘の土です。しかしバラの木のそばにあった土ですので、バラの香り
がうつりましたと答えたそうです。朱に交われば赤くなる.良き友を得る為の譬えのようです。

モスクにも行きました。ミナレットの上に人の手を描いたものが2つかざして立っていました。1つは大切な5人の預言者
意味しています。マホメット、アリ、ファティマ(アリの妻であり、マホメットの娘)、ハッサン、フセインです。両の手となると
創造者アラーへの絶対服従を意味します。モスクのドームの上に立つ5つの球も5人の預言者を表しているそうです。

女性が髪を被う被り物をするのは、イスラム教以前のゾロアスター教時代からそうしていたといいます。ゾロアスター暦
では、3月21日が新年にあたります。その日はクリスマスのように互いにプレゼントして祝います。特に子供たちはこ
の日を心待ちにしています。シラーズの郊外にあるペルセポリスの遺跡は、ゾロアスター教の新年を祝うためにつくっ
た神殿コンプレックスであり、当時アケメネス朝ペルシャの支配地から祝いの物産をラクダや馬に積んで各民族の長が
皇帝に献上するために、春にはやって来ました。

老若男女を問わず私たちに優しく語りかけてきたイランの人に接して、'百聞は一見にしかず'の諺の通りこの国のこと
を余りにも知らなさ過ぎる自分に気がつきました。
学校でこの国が生んだ700年も前の詩人の詩を皆が暗記して朗読する文化を持ち続けている人たちでした。
        




 623  コーランの本と祈り用の敷物がホテルの部屋に




イランのシラーズの町で泊ったホテルは、1971年ペルシャ建国2500年を祝う為に世界からやってくる招待客の為に
つくられたものでした。

ロビーの中に英語で'Down with USA'(アメリカよ!地に落ちろ!)と書かれた文字が目にとまりました。1978年のホ
メイニ革命の際に加えられたそうです。1998年になった現在では、アメリカからやってきた中年の女性の一団が、こ
のロゴの下をこの国の習慣に従って、頭のてっぺんからつま先まで黒装束のマントとスカーフで身を包み談笑しながら
歩いています。
食事は味付けがあっさりしていて、ピラフ系のお米をたくさん食べるようで野菜と混ぜたものやプレインごはんもあった
りしましたが、バターが添えてありました。
また、インドあたりと同様チャパティやナンに似たパンがついています。肉は羊、牛、山羊などがあぶったりしたものを
薄く削った状態で薄味でカバブにして出ていました。シシトウや玉ねぎを味のアクセントにしていただきます。紅茶は美
味しくデザートは一段と甘いものでした。

2月の頃でしたが早朝5時前には、遠くから夜明け前の祈りの呼びかけの浪々とした声が響いていました。部屋の中に
は、英語とアラビア語で書かれたコーラン(Holy Quran)がありました。そして、傍には折りたたんだお祈り用の薄い
敷物が用意してあります。少しページをめくってみました。ユダヤ教、キリスト教の後に生まれた宗教だけに、また同じ
地域を共有しているので、内容的には聖書と重複している箇所が多い印象です。そして、アラーが定めた諸々の日常
生活への指導要領がかかれています。
詩人公園で、ガイド氏がサーディの詩を浪々と歌ったのを思い出しながら、おそらくコーランも流れるように読まれるだ
ろうと想っていました。
           





624  ペルセポリスの神殿跡に6+1のしるしが




ゾロアスター教はアフラ・マズダ神と共に6人の天使がいて、悪(暗闇)との戦いのドラマです。

6人の天使はそれぞれ水(アエヒタ美しい女性)、太陽(ミトラ男性)、風(ワヒオ)、火(アタール),大地(ザム)、月(マー
フ)となります。6人の天使と主神で6+1となり、この国では7という数字がラッキーナンバーだそうです。
ペルセポリスは、ダリウス大王治世(紀元前521〜485)の紀元前518年から建設が始まりました。アレキサンダー大
王がこの地を征服した時(紀元前4世紀末)も建設は未だ続いていました。ダリウス大王治世の頃、ギリシャ都市国家
連合軍とのマラトンの戦い(紀元前490年)で、ペルシャは敗れました。しかし、10年後の紀元前480年には再び息子
のクセルクセス王によりギリシャへと進軍しました。その際、アテネ市民は町を焼いて海に逃れ、サラミス島沖合いの海
戦で再びペルシャ軍は負けました。この史実を知っていたアレキサンダー大王はアテネ焼失の復讐としてペルセポリス
の町と神殿を焼きました。アレキサンダー大王は神殿にあった記録文書(レンガや粘土に書かれた)をギリシャ語に訳
させたので、後日の研究者の役に立つこともしました。
ペルセポリス(パールセと呼ばれた)は岩山山脈を後ろに背負い、前は平野がのびやかに広がっています。今に残る
神殿跡は、ゾロアスター教の教義のままに善と悪、拮抗する力を持った動物と人を双頭の飾りにして石柱の上にデザ
インしたり、生命の木である糸杉のデザイン、そして左右対称の3段の階段になった頂上のテラスと合わせて6+1(6人
の天使と神)の小さなデザインが石壁の中に行儀よく並んでいます。この階段式のデザインの中央には,聖なる光へと
通じる道を表す入り口が描かれています。
3月21日が新年の始まりの日であり、春の訪れを共に祝う為、広大な支配地から土地土地の物産を持って、この春の
神殿、宮殿へと出向く人々のレリーフも美しく残っていました。
           




625  キュロス大王の墓はソロモン王の母の墓?




ヘロドトス(紀元前5世紀の人)はペルシャの歴史記録を詳しく述べた歴史家です。

背景には、ギリシャ語に訳された中近東世界の様々な資料や記録が整っていたことがあります。ヘロドトスによると、キ
ュロス大王は紀元前598年に生まれました。40歳前後で王となり、紀元前551年(47歳)でアケメネス(キュロス王の
曽祖父の名)王朝を興しました。そして紀元前529年(69歳)に殺されました。
治世中にメディア、ヘレンジオ、パラホジア,バクトリア、バビロニアなどを破りました。特にバビロニアを征服した際に
は、首都バビロンに幽閉されていたユダヤ人を釈放してパレスチナに帰しています。聖書の中でも大きく取り扱われて
いる事件でした。
キュロス王の墓は周りを遠く山が囲った広い草原の中にポツンと立っています。40キロ離れた石切り場から石灰岩を
運び、6層の石段の上に石棺が載っています。ゾロアスター教の6人の天使と神(6+1)であり、天使6人に支えられた
神ならぬキュロス王ということでしょうか?過っては、この地は20万人を超す大都市で縦横15キロ×10キロの壁が町
を囲っていたそうです。7世紀にやってきたアラブ人たちは、この墓が聖書の中で英知の王と讃えられたソロモン王の
母の墓だという地元民の話を聞き、壊さなかったと伝えられています。また、キュロス王の墓はイランの西にあたる有
名なジグラード(聖塔)に向けてつくられたとも言われています。ジグラードは天におられる神を讃えてつくられたとも、あ
るいは墓とも言われています。聖書の中に出てくるバベルの塔もジグラードのひとつだったのでしょうか?
  

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