希望




456  住む場所によって待遇が違う



ニュージーランドで車を走らせていると,小さな動物の屍骸によく出会う。

その多くはオボッサムという小動物で、オーストラリア原産のネズミ科だそうで夜行性です。羊の数よりも多く繁殖してい
て、鋭い爪を持ち、穀物を初めもろもろの被害を与えています。例えば、電信柱の下部に金属板がぐるりと巻かれてい
ます。これは、オボッサムが滑ってよじ登れないように、ネズミ返し(?)の役を果たしています。
車は夜は,時速100キロ以上で飛ばしますから、この小さなオボッサムを轢いても気にかけず、ブレーキをかけることも
せず通り過ぎるため、残骸を見ることになります。
オーストラリアでは、オボッサムを記念物として大変にかわいがっているそうですが、こちらにやってきた分家の方は、
誰も見向きもしない嫌われものになっています。



457  ワイトモ洞窟で神秘の小宇宙体験



ニュージーランドに生息するアラクノカンパ・ルミノーサと正式名称がついている虫が、有名な土ボタルです。

卵の時期が3週間、幼虫の時期が8〜10ヶ月そしてさなぎになり3週間、さらに成虫として1〜数日過ごした後、死にま
す。幼虫の時に、30〜40本の糸を垂らし、お腹の辺りで光を発し、垂らした糸に引っかかった虫を吸い上げて、栄養
にして成長していきます。
真っ暗な湿り気のある洞窟の中で、1年近く生活するので、蚊に似た昆虫だそうです。

洞窟の天井に張り付いた土ボタルの発する光は、正に小宇宙の名に相応しい神秘の世界です。小さな船に乗って、僅
か10分程度の見学ですが、この世のものとは思えない瞬間でした。



458  少し理想に過ぎるかも知れませんが



だいぶ前に旅行先で、メモ書きしたものがあります。

タイガーウッズという混血(黒人とアジア人)のアメリカ青年が、ゴルフのマスターズ選手権で若干21歳の若さで,ぶっち
ぎり優勝しました。
ここ500年の世界の歴史は、ヨーロッパ・アメリカを中心とした、白人の断然リードするものでした。白人以外の有色人
種は劣っているのではないか、猿に近いなどと真面目に白人種間では、議論されたことすらありました。アーノルド・トイ
ンビー博士(歴史学者)の育った20世紀初頭の文明史観では、唯一文明と呼び得るものはヨーロッパにしか存在しな
いと、考えた時代だったそうです。
勿論、現代人の目で振り返ると、むしろ有色人種が歴史をつくって、およそ500年前から進取の気に富んだ、ヨーロッ
パ人(スペインやポルトガル)に新しい松明の火を、渡したと考える方が正しいことが分かっています。
それにしても、これから地球に生きる人々は、みんなで協力して何人種であれ、歴史をつくっていくこと無しには未来は
なく、個人個人の持っている精神的、肉体的な財産を最大限に発揮して、国境を越えて誰もが平和と幸福のために励
ましあい、生きていくことが大切です。過去の印象に捉われた歴史観ではなく、是々非々で判断し、地球上に住む誰と
でも交流し、背筋を伸ばして360度見渡し、自分の道を探すことです。
新しい遺伝子(世界人という考えを持った)を未来の人に伝えることです。
この新しい遺伝子とは、みんな幸せになりたい、不安から逃れたいという思いを持っていることを大前提に置き、肌の
色や言葉、歴史宗教階級男女職業年齢健康病気ハンディキャップなどを超えた次元での、付き合いの出来る遺伝子
をいいます。



459  10人中6人が賛成すれば



プロ野球は今や海を越えたアメリカで、日本人選手が大活躍する時代になりました。

それにしても、みんな高収入を得る割には当てにならないようでピッチャーも打たれれば、バッターも三振するし、エラ
ーもよく見ます。
ひところの落合選手は、3億円バッターといわれ、10回バッターボックスに立って3回ヒットを打てば3割バッターとな
り、3億円貰いました。
添乗員が、10人の人を案内したとして、6人の人がアンケートに楽しかったと書けば、落合ほどの価値はあると私は思
っています。それほどお客の気持ちも要求も難しくまちまちです。
行政改革のシンボルとして,尊敬を集めた土光敏夫さんは、側近の人に'自分の思うことを話して、10人中6人が賛成
してくれれば上出来だ'と言っておられたと聞きました。
私としては、光栄と思うと共に我が意を得たりという気持ちでした。



460  鏡が歪んだり曇らないように



考えるというのは、過去にあったことに反応する作業です。

私達は、他人の経験であれ、自分のそれであれ経験を基にしてしか、先を見通すことは出来ません。自分の現在は、
これまで歩んだ結果がつくったものです。
'歴史学は、未来学である'という言葉は、正しいと思います。しかし、歴史は往々にして改ざんされてしまいます。時の権
力者が、都合のいいように書き換える傾向があります。英語ではヒストリー(歴史)と云い、この言葉の語源はイストイア
というラテン語だと聞きました。イストイアは、傍注とか但し書き、索引をさしていて、本文の補正であり理解を正しく得る
ための役割をするのだそうです。
おそらく昔から、無理やり権力者好みの書を書かされた人が、良心のはけ口として傍注の中に真実、事実を述べたこ
とに端を発しているようです。
鏡という言葉は、日本では正統な公式歴史書につけられました。例えば、大鏡、増鏡,今鏡、水鏡などあります。鏡は、
ものをありのままに映し出すもので、白雪姫の継母が(本当の母親という説もあります)鏡に向かって、'世界で一番美し
い女性は?'と聞きますが、最後には正直に答えざるを得なくなります。鏡こそ自分の今を正しく写すものです。
アルビン・トフラー氏(アメリカの未来学者でパワーシフトという本を書く)は、権力の三本柱は暴力,金力、情報力であ
り、わけても21世紀は情報力の価値が増すと予言しました。正しい情報を選択する力、つまり鏡を持てるかどうかが決
め手となるようです。
日本の歴史を通しての権力者は、天皇家であるといい、天皇家の宝である三種の神器は、剣、勾玉、鏡からなってい
て、それぞれ暴力、金力、情報力を象徴しているといいました。



461  共通して20年はかかる



タイ国の国旗は五層に仕切られています。

上と下が赤色で国民を表しています。真ん中が青色で王室を表し、赤と青に挟まれた中間部分が白色で仏教(仏)を表
していて、国民と王室が力を合わして仏教を守り抜くということだそうです。国民の94%が仏教徒であり、顔の前に手を
合わして挨拶する姿は、優雅であり美しいものです。
内陸のチェンマイ市郊外のマサエ象キャンプ地には、100頭あまりの象が飼育されていて、人馬一体ならぬ人象一体
となり客のもてなしをします。
象は一日に200キロもの餌を必要とし多量の水を飲むので、現代社会は彼らにとり住みにくい試練の時となっていま
す。
 
象の一生はおよそ70年、フランスの葡萄畑の木やつるも70年、人もおよそ70年の命です。一人前に成るには、共通
して20年はかかります。なんと生きものは手間隙かけて一人前になることでしょう。
1歳の象もショーに参加していました。なんとも愛ぐるしい姿でした。



462  ポレ ポレ



'ポレポレ'とスワヒリ語でいいます。

ポレポレこそケニア人の心であり、リズムだそうです。
日本語に直すと、'ゆっくり'という意味です。今日の日本では、タブーに近い言葉といえそうです。しかし、私は海外旅行
にとって最も必要な大切な言葉だと思います。
ポレポレは人に自然の壮大さ、小さな生きものの創造や繰り返しのドラマを見て感動したり、他の国々の人々のつくり
だした文化や街並みのリズムを感じ,人間の多様性を認め、人に優しく接することの素晴らしさを気づかせてくれます。
日本にはない、あるいは失ってしまったものを見つけることもあるでしょう。
国を超えて人は、不安から逃れたい、幸せになりたいという共通の願いをいだいて生活しています。外国のリズム,縄
張り(テリトリー)の中に入り、心を平らにして風景を見、人に接する素晴らしさは、真実気持ちを豊かにすると思いま
す。 
せめて、'おはよう''こんにちは'の挨拶や、ものを頼む時の'お願いします'そして'有難う'の言葉は、多く心がけて使いた
いものです。さらに、笑顔を付け加えることも大切だと思います。災難除けとしては、起きているときは背筋を伸ばす気
持ちを忘れないことも大切です。それだけで随分、周囲の人の動きや環境が見えてくると思います。見て感じることで、
きっと新しい出会いや発見があることでしょう。携帯電話やファクス、テレビやインターネットなど便利と経済効率性の美
名にどっぷりとつかった日本の日常生活から離れて、穏やかな心のリズムで、博物館や教会,橋や公園、壁で囲まれた
町などを訪ねたり、今を生きている人々との一瞬の交わりの中に、少年の心(素直な喜びや驚き)を思い出すことでしょ
う。
私たち日本人は、地球人のリズムを構成する一員であり、世界の多種多様なリズムを認めることから隣人や自分に対
する愛も生まれ育つことでしょう。
本当に旅は素晴らしいものだと思います。



463  死後(未来)への希望はあるか? 是!



14世紀の人イブン・カルドゥーンにとり、イスラム文明のみが注目に値するものでした。

オリエント地方やエジプトにうち捨てられていた遺跡や廃墟は、ナポレオンがエジプトへ入るまでは、イスラム教徒にと
っては何の興味も惹くものではありませんでした。18世紀の初めはというと、西欧においては僅かに2つの文明が見え
るのみでした。西欧文明とヘレニズム文明です。アーノルド・トインビー博士が1927年に歴史を専門にされ歩み始め
た時点で、21の文明が明らかになっていました。これら多くの文明の発見は、18世紀末から130年に亘る考古学者や
オリエンタル研究者によるものでした。そして、1961年までには、31の文明が明らかになるほどになりました。さら
に、アフリカ文明を加えることも検討され始めていました。
トインビー博士の'歴史の学び'の本の結びでは、未来(死後)への調和、希望を求めている印象です。宗教による啓
示、救済も影響を与えているように感じます。数多くの事例をあげ、歴史の中での出来事を考えながら、繰り返された
人類の営みの先にある見えないものへの希望を感じているようです。生から死へ、そして再生と繰り返された営みの中
の登場人物は変わるが、変わらないものは必ずあり、そこに真理を見出そうとする歴史学者の鋭い眼差しが辿り着い
た 是!という答えです。



464  歴史紀行の醍醐味!



トルコのブルサで影絵芝居を見たり、オスマン・トルコ帝国の復興者スルタン達の廟やモスクの中で、異邦人の私たち
を見つめる暖かい眼差しに後ろ髪を引かれながら、翌日行った3500年の歴史が狭い壁(都市の周りを囲ったいた)
の中で幾重にも重なったトロイの遺跡を見学しました。雨や風が強く吹きつけ、さした傘が役に立たないほどでした。

ペロポネソス半島のミストラの遺跡(ギリシャ正教徒が住んだ7〜800年前につくられた山の中腹の町跡)では、歴史
学者のトインビーさんがここに立ち思いをめぐらしたことを本の中で述べていますが、大学者と同じ所に立ち私も歴史を
思考できることに感動していました。
眼下に見える、水が豊かにあり緑に恵まれた大地こそスパルタの都市国家だったところです。果たしてあの有名なスパ
ルタ式教育は,自然の恵みに富んだ場所であるがゆえに、逆に厳しく育てることで油断を怠らず一致団結して国を守
り、周囲の自然の恵みに浴さない都市からの侵略に備えていたのではなかったか?と私は勝手に愚考まで始めていま
した。



465  過剰なサービスが好かれるのは?



新聞や牛乳、プロパンの取替え、それにヤクルトの飲料水まで配達してくれる国、それが日本です。

親切といえばそうだし、サービス料はコストの中に含まれていて、そこまでしなければ客に好かれない、買ってもらえな
い、競争に勝ち残れないからそうするのだろうか?
一方では、Eメールやインターネットなどを利用した販売者と消費者が顔を会わせることなく、商取引を行うようになりま
した。私には、いづれも行き過ぎのように思えます。
ヨーロッパや中近東の街中で見られるような朝市的な、客と売り手が日常会話などを交わしながら、ゆっくりと楽しみつ
つ売買する方に愛着を感じます。
日本人は生来せっかちなので、コミュニケーションを楽しむほどの時間やゆとりはないのだろうか?1960年代に高度
経済成長期に入り、加速度が増したようです。
警察のドライバーへの忠告ロゴに,'狭い日本、そんなに急いで何処へ行く?'が掛かっていたのを懐かしく思い出し,言
い得て妙であった気がします。
  

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