希望




396  知らずに聖者の墓に向けて小便した日本人



不思議の国インドの中にあっても、格別神秘的な雰囲気を感じるのがガンジス河の中流に開けた町、ベナレス(今では
ヴァラナシという)です。

ここを訪れる多くの人は、鉄道を利用します。英国統治時代につくられたブロードゲイジ(広軌1.55メートル幅の線路)
とミーターゲイジ(1メーター丁度の線路幅)が交錯する大きなジャンクション駅が、ベナレス郊外にあるムガールサライ
です。
北インドにあって東西の中央に位置していて、交通の要衝です。大国インド支配を少人数の英国が行うにあたっての知
恵が、この駅に生かされているように感じます。つまり反乱など起きた場合、兵隊をここに配置すれば各地から上ってく
る不平分子を一網打尽にできるようにと。
その他、ナローゲイジ(狭軌)といって、山岳地帯に敷いた線路幅の狭い鉄道もあります。これは主に、英国人の避暑
地として目をつけた高地(ダージリンなど)につくられたようです。
さてこの活況をていするムーガルサライ駅で、以前仏教巡拝団を案内して列車の入ってくるのを、プラットホームで待っ
ていたことがあります。しかし待てどくらせど列車は来ません。しばしば入ってくる数分前にアナウンスで、プラットホー
ムの変更すら行う(これは現在のヨーロッパでもある)お国柄です。日が落ち、辺りが暗くなり始めました。私は尿意をも
よおしました。便所は1番線の駅長室近くまで行かなくてはなりません。何時列車が入ってくるか分かりませんし、責任
もあります。持ち場を離れることも易々とはできません。プラットホームの周りを見渡すと、同じプラットホームの後方に
木が1本植えられていて、そこだけが土が盛り上がっています。人影も殆どありません。一人でそこに行って静かに小
便を始めたのですが、すぐに大声で何人かのインド人に怒鳴られ、首をつかまれてしまいました。何とか同行のインド
人ガイドに来てもらい、助けてもらいました。怒鳴られた理由を尋ねてもらうと、私はイスラム教の聖者の埋葬してある
墓に向かって、小便をしたのだそうです。この聖者は、列車を待つうちここで死んでしまいました。信者たちは、遺体を
そのままプラットホームの中に埋めたのだそうです。
知らないというのは恐ろしいもので、私が明らかにインド人らしからぬ風体であったために、助かったようです。そうでな
ければ、どうなったか分かりません。
'百聞は一見にしかず'の諺通り、常識が非常識(プラットホームに墓をつくる?)になりうることを身を持って体験しまし
た。

今となってみれば、忘れ難い最高の思い出となりました。



397  お休み



バケーション(米語)とは、元々は頭も神経も体も休ませることのようです。

VACANT(放心した、ぼんやりした、暇な、空席のある)と同じようです。
以前、スリランカのホテルのプール傍で朝から夕方までじーっと寝そべっていたソ連の旅行団の人々を思い出します。
私たちが忙しく観光名所を廻る中、本来のバケーションを満喫していたようです。

ホリデー(英語)は、Holy Dayからきているようです。
宗教にルーツを持つ日で、働かず静かに神のことを思う日だったことでしょう。
最も今では、ホリデー・メーカーなどといい、休日の行楽者、騒々しい遊覧客が増えているようです。



398  ベレンは大西洋を挟んで河口に二つあった



ヨーロッパの最西端、大西洋の荒波が海岸を洗う所にあるのがポルトガルです。

テージョ河(約千キロ)は、イベリア半島の中央あたりから流れ出し、スペインの国境を越えて西へと旅をし、やがて大
西洋へと河口付近では海と見間違えるほどの大河となって長旅を終えます。河口そばの7つの丘に育まれた町が、ポ
ルトガルの首都リスボンです。河岸には、ベレンの塔があります。大航海時代(15〜16世紀)は、このあたりから大型
カラベラ船が出入りしたそうです。ベレンとは、ベツレヘムのことでイエスが生まれたところです。
同じベレンという名の河口の町を,地図で見つけました。
後日、実際にその上空を飛行機で飛んだこともあり、アマゾン河の河口にあります。
紀元後1500年丁度、ポルトガルのカブレルという探検家が、大西洋へと突き出したブラジルの最東端に達したそうで
す。その数年前に結ばれた、トリニシアス協定で大西洋のほぼ真ん中を境にして、新しく発見される土地を東側をポル
トガル、西側をスペイン領とできるようになりました。時のローマ法王の仲裁に寄るものでした。そういう事情で、南米で
は唯一ブラジルがポルトガル領となりました。大河アマゾンの大量の水が大西洋へと吐き出す河口の町に、故郷のテ
ージョ河が同じく大西洋へと大量の水を吐き出すイエスゆかりの町ベレンの名を冠したベレンの塔にちなんで,名をつ
けたのでしょう。



399  エイト・エルケ・ビール(大犠牲祭)の祭り



エイトとはご馳走を意味し、ビールは大きなということで合わせると,大犠牲祭,大祝賀会とでもなるのでしょう。

アブラハム(旧約聖書の中に出てくる約4千年前の人で、イスラム教ではイブラヒムと呼ばれる)は、信仰の強さを神に
試されました。愛する長子イシマイルを生贄にするようにいわれます。まさに長子の首を落とそうとする瞬間に、天使が
止め羊を代わりとするように指示したそうです。このエピソードは、キリスト教やユダヤ教では次男のイサクとなっていま
す。イサクはアブラハムの正妻サラ、そしてイシマイルは下女のハガルの腹から生まれました。やがてイシマイルとハ
ガルは群れを離れ、砂漠へと追われます。やっとのことで、今のサウジアラビアのメッカ近くのザムザムの泉へ辿り着
き、救われました。イシマイルの子孫にあたるのが、マホメットでありイスラム教を起こす人になりました。

エイト・エルケ・ビールは、ラマザン(断食月)が終わって2ヶ月と10日ほど経った新月の頃、祝うのだそうです。この祭
りの前に、メッカ巡礼(ハッジ)も行われます。故郷で、あるいは巡礼先で羊を屠って盛大に、信仰に強く生きたイブラヒ
ム(アブラハム)とイシマイルのエピソードを祝います。この祭りのために羊が多く必要となりますが、祭りの10日から2
週間前から盛んに羊が買われ始め,各家庭でその日までエサを与え、丸々と太らせるそうです。そして、殺して調理す
るのも各家庭で行うようです。
2005年は、1月の20日前後がこの祭りになるそうで、チュニジアでもバスを走らせていると、祭り用の羊が多くトラッ
クに乗せられて、町へと運ばれていました。
それにしても、羊一頭を家庭でさばく能力は、日本とは全く違う世界に生きる人達だと感心、感動しました。



400  聖地巡礼(ハッジ)では何をするのでしょう?



月の満ち欠けで(太陰暦)生活のリズムを構成するイスラム教の人達は、ラマザンが終わり、しばらくすると聖地巡礼が
始まります。

モスリム(イスラム教徒)にとり大切な5行の一つとされ、可能であれば一生に一度は聖地に行き、初期に生きたマホメ
ット達の足跡を訪ね、信仰を新たに強くする薦めのようです。
イスラム教では、聖地としてはメッカ、メディナ(サウジアラビアの)、エルサレムそしてケルワン(チュニジア)などが主に
考えられます。さらに宗派(スンニ、シーアなど)によりバリエーションがあるようです。誰もが大切にしている聖地巡礼と
いうと、サウジアラビアのメッカとメディナとなります。
メッカにはカアバ神殿があります。神殿内には、イブラヒム(聖書のアブラハムと同じ人物)が天使から頂いたという黒
い石が置かれています。この石はパラダイス(アダムとイブが住んでいた楽園)にあったそうです。イスラム教徒たち
は、やがてくる最後の審判の日を待っていて、いつの日かパラダイスに行きたい願いを持って生きています。7回この
神殿の周りを回ることで、夢が近づいた思いに満たされることでしょう。またメッカのそばのアラファット(知り合うという
意味)へと登り、サタン(悪魔)めがけて7回ほど石を投げるそうです。ここは、アダムとイブが知り合ったところで、やが
てサタンの誘惑に負けてしまい楽園追放となったので、その過ちを起こさせた張本人(サタン)に対して石を投げるとい
うことでしょうか?
またザムザムの泉にも行くそうです。この泉は砂漠へと追いやられたハガル(母)とイシマイル(子)がやっとの思いでこ
こまで辿り着き、命を救われた生命の水の湧き出す所です。イシマイルの直系の子孫にあたるのがマホメットであり、
彼こそが神、アラーがこの地上に送った、最後のしかも最も偉大な預言者であることを信じ、証する人達がイスラム教
を奉じる人たちです。そして、メッカから北へ200キロあまり行ったところにあるのが、オアシス町メディナです。このメ
ディナのマホメットの家で、信者たちと一緒にアラーを讃えてお祈りしたのが、イスラム教の始まりでした。以後、このマ
ホメットの家が基本になって、礼拝堂、中庭、そして祈りの呼びかけの塔(ミナレット)の3つの機能を持つ、モスクがど
こでもつくられました。



401  自転車に幸あれ!



18世紀の末のことだそうです。初めて自転車なるものがこの世に現れたのは!

日本では、、松下電工の創業者、松下幸之助さんが10代で最初に奉公した先が、自転車メーカーだったと聞いていま
す。当時は、自転車を一台買うお金で、家が一軒建ったそうです。
現在はと言うと、普段用のバイセクルは、5千〜1万円で手に入ります。しかし、マウンテンバイクとか競争用、レジャー
用、健康用バイセクルとなると、何十万円もかかります。
ヨーロッパでは、土曜、日曜日ともなると、モーターバイクと並んでバイセクルが乗られ、中高年層のゆとりのある男女
を中心に、お洒落に愛されています。

ミラノやタイペイなどで世界サイクルショーが開かれ、関係企業の人が多く集まります。
中国や台湾、インドなどは安い大衆車を主に大量生産していますし、アメリカやヨーロッパなどは高級サイクルを手が
けています。
歴史的には、産業革命で鉄を使っての自転車づくりが可能になり、ブルジョアジー層の誕生により、都市においてお洒
落な乗り物として好まれ、発展したのではないでしょうか。
やがて、鉄道、電信電話、自動車飛行機などより速く正確に楽しく、大勢が利用できる、いわゆる文明の利器が生まれ
ました。自転車は過去のものとして、忘れ去られる運命かと思いきや,省エネルギー、公害フリー,健康器具として時代
を先取りした乗り物として再生しました。スローで,細いわき道に入ることも出来、何よりも自分の意思で自由に動かせ
るものです。
自転車に幸あれ!



402  バルドーとは庭園という意味



チュニスのメディナ(旧市街)から北に少し行った所に、モザイクの収集で世界的に有名な博物館があります。

スペインがチュニジアを支配したこともあり、博物館の名の由来は、プラドス(スペイン語であり、日本語では庭園)と呼
ばれていたこの辺りに、ベイ(オスマントルコ帝国のチュニジアにおける総督)の館をつくりました。この館が今は博物館
となり、屋敷の周りは広い庭園が残されていて、老木が立っています。そして、アラブ語のバルドー(庭園)が、そのまま
使われています。庭園は一神教世界では、アダムとイブが住んでいた楽園(パラダイス)の連想へとつながるようです。
いかに楽園願望が強いかが察せられます。その楽園にあった石が、メッカ巡礼の中心になっているカアバ神殿の中に
置かれていると云います。元々マホメットは、石やその他のアイドルを拝んでいた周辺のアラブ民族を叱って、イスラム
教(アイドル崇拝を禁止する)を起こしたようですので、私のようなものには奇異に思えるのですが????

さて、バルドー博物館の中は、主に4つの時代に分かれています。
先史、カルタゴ(紀元前9世紀〜紀元前2世紀半ば)、ローマ・ビザンツ(紀元前2世紀〜7世紀)、アラブ時代です。館内
は、チュニジアに残る12のローマ・ビザンツ時代の遺跡から見つかったモザイクを中心に構成されていて、ローマ時代
の浴場の床に敷いていたモザイクなどは見事です。ベイの屋敷の天井や壁、内装などは伝統のイスラム様式と近代ヨ
ーロッパが折衷していて、これもまた一種独特の雰囲気を作り出しています。



403  街路樹に石灰を塗るのは



久しぶりにチュニジアへやってきて、東西文明(伝統の中近東アラブ・イスラム世界と科学技術、合理精神の近代西欧
文明が、ほどよく交じり合っているのを感じました。
海岸の町、スースの近代的なホテルの部屋には、万一の停電に備えて、ローソクとマッチが用意されています。あるい
は部屋の窓から見える大通りに面した街路樹には石灰が、根元から2メートルぐらいの高さまで塗られています。
石灰を塗るのは,街燈のない所では車のライトを浴びて白く光るので、路肩が近いことを知らせ、安全運転に役立ちま
す。また国や地方の公の木であることの印であり、さらに木を食い荒らす虫を駆除してくれる効用があると、かってイン
ドで聞いた話を思い出しました。



404  21世紀とは



アルビン・トフラー氏の一貫した20年に亘る一連の本により時代の捉え方を教えられて、かなり目が開けてきた思いで
す。

農業革命により一万年前から人類は、河の辺に定住生活を始め、集団で農作物を再生産する技術と知恵を身につけ
ました。250年前から産業、工業を中心にした工場で製品を大量生産、、大量販売そして大量消費するシステムをスタ
ートさせ、それに見合った工場労働者(均一化した)を普通教育で育てる方法を考えました。大衆の買いたいという購買
意欲を高めるための、マスメディアの果たした役割も見逃す分けには行きません。

しかし、これからの21世紀をリードするのは、これまでになかった個々の価値判断を重視した、オーダーメイドの製品
であれライフスタイルであれ、バラエティに富んだ代替がきかない文化の中から生まれるといいます。個々人の判断が
行われるためには、自由に情報が手に入り自分で決められる能力、社会のレベルの高い環境,政治などの整備が不可
欠です。
政治体制や社会環境、歴史の推移などは、国地域によりまちまちですが、おおむねポスト工業化時代に入っていること
は、間違いないようで、統計が示すとおり、サービス関連産業に従事する人口が60%を超えて70%へと近づいていま
す。知識を組み立て、新しい情報として提供できる人、企業、社会こそが21世紀の旗頭となるでしょう。
ホモ・サピエンスとは考える人だそうですが、深く思考し、見えない先にある光や,灯りを見つけることこそ真に頼りにな
る知恵いっぱいの情報となるでしょう。

旅こそ発見、出会いの手助けになり知恵の提供者になることでしょう。



405  大天使ガブリエルの役目



マホメットはガブリエルの導きでコーランを書いています。

そして勇気づけられて、異教を信じる部族の中に入っていき、アラーの教えを説きました。マリアはガルリエルの導き
で、神の子イエスを宿すことを知らされます。イスラム教では、イエスもマリアも尊ばれます。ヤーヴェ(ユダヤ教、キリス
ト教)の神といい、アラー(イスラム教)の神といい、同じ神です。
神が宇宙を創造し、天使たち(御使い,霊者)と共に天にいて、人間の祖先(アダムとイブ)の犯した罪を何とか救ってや
って、元のパラダイス(楽園,死のない不変の永遠の幸せ)へと帰してやろうと時折、天使や預言者を使ってメッセイジを
伝えさせました。
しかし、悪霊(サタンの一味)たちにこの世は支配されているため、思ったようにははかどらない状況の中、やがて裁き
の日が近づいている。裁きの後は、神の教えを守った人は、救われ永遠の命が与えられるようです。
神の優しい慈愛に満ちた,救いをもたらす役目をガブリエルは担っています。もう一人の大天使ミカエルは、悪魔退治、
異教征伐、病気快癒など勇ましい、猛々しい戦う面を受け持って登場します。


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