希望

246. 南インドの風景、習慣が残るバリ島の住宅街


インドネシアは、東西に長く数え切れないほどの島々が分布しています。

その中のひとつがヒンズー教の残るバリ島です。山中には立派なヒンズー寺院があり、敬虔な信者達が着飾り、神様
へのお供え物を手に持ち、頭上にのせて参拝していました。
閑静な住宅街では、夕刻になるとヤシ油で髪をきれいに整え、頭の後部を花で飾ったサリー姿の優雅な女性が、自宅
前を掃いた後、玄関前にチョークで伝統の模様を描き、香をたいていました。上等な絵を見ているような気分でした。

島の奥にある、ラジャ(大地主)の私邸に行くと、まず先祖の記念碑群に連れていき、敬意を表してから、高床式の木
造のバルコニーにテーブルが用意され、ブフェ式の夕食をご馳走になりました。夕食の後は、家の前の広い庭で村人
達と一緒になって、バリ島伝統の舞踊や歌を、芝生に座って鑑賞しました。

観光客がいっぱいのデンパサール辺りでは味わうことの出来ない、思い出に残る一夜でした。


247. インド人は老後はアイルランドで


アイルランドが、ハイテク産業を中心に経済上昇を始める以前でした。

ロンドンの、とある私設の博物館の管理人を長くしているマドラス出身の老いたインド人紳士の話です。
老後のことを考え、故郷の南インドのマドラスに戻ったところ、昔の面影が消え失せ、喧噪の巷と化していたそうです。
インドに帰ることには見切りをつけ、定年後はガールフレンドの故郷で、牧歌的なアイルランドに住む積もりだと言って
いました。

そして初めて最近訪れたアイルランドのダブリンやアラン島には、古き良きゆったりしたリズムを見ることはなく、観光
化され、せっかちになりつつある姿を目にしました。


 248. アルキメデスは添乗員(仲介者)の元気の源


攻め寄せてくるローマの軍船団を鏡を使い、太陽の光を一点に集め、ものの見事に燃やしてしまったエピソードの人
が、シシリー島のシラクサ出身天才・アルキメデスです。

強者を動かすには、弱者(仲介者)は関係を変え、移動させ、接触する角度を変えることによって出来る。ただ、仲介者
には忍耐と恐れと同居する能力、勇気が必要だといいます。順序だった思考が難問をたやすくさせます。
重い物も小さな道具を使えば動かせます。ネジとかテコの原理を応用することにより、不可能と思われるようなことが、
可能になるといいました。



 249. 元々のオリンピック


全能の神ゼウスを讃えて、オリンピアの聖地において4年ごとに紀元前776年から千百年もの長きに亘り、行われまし
た。

雄牛100頭を殺し、祭壇に捧げました。スポーツ競技以外にも音楽や他の芸術が共に催されました。競技の勝者には
オリーブの冠、赤いリボン、ヤシの葉などが与えられ、花びらがギリシャ壺の中から取り出されふりかけられました。
大会の華は、ペンタスロン(五種競技)だったかも知れません。走る。幅跳び。円盤投げ。やり投げ。レスリングでした。
いづれも戦争の際、要求される勇者としての重要な要素です。
ギリシャの各都市国家(ポリス)の代表が競う大会ですから、どこのポリスが鍛えられた勇者を多く持っているか見定め
る視点からも注目されたことでしょう。
面白いのは戦車競技に限り、女性の参加が認められていたことや、水泳は競技種目にはなく、ただ選手の疲れを癒や
すとして、プールが用意されていました。

紀元後395年にローマ皇帝テオドシウスは、オリンピックは異教にルーツを発しているということで、廃止しました。同
時に、キリスト教のみをローマ帝国内の公認の宗教とした人でした。


250. 坊主憎けりゃ袈裟まで憎い


カリブ海に浮かぶ島にジャマイカがあります。

この島の多くはアフリカから奴隷として連れて来られた人達を、先祖に持ちます。英国人の経営するタバコや綿のプラ
ンテーションで働かされました。かっての宗主国の都である、ロンドンに住むジャマイカ出身の人達は、決してロスマン
銘柄のタバコは吸わないと、ロンドンに住む日本人の友人は言います。
おそらくジャマイカには、ロスマン社のタバコ農場があり、黒人を酷使したのかも知れません。

ボストン茶会事件(アメリカ・インディアンに仮装したアメリカ人が、英国船に積んであった茶箱をボストン港に投げ込
む)以来、あれだけ好きだった紅茶を飲むのを止め、その代わりにコーヒーを薄めて、紅茶のようにして飲み始めた結
果、アメリカンコーヒーが生まれたという人もいます。

植民地での被支配の中から、商品(タバコや紅茶)を抵抗、独立の象徴にして、生きてきた人達の強い意志が見えるよ
うに思います。


 251. ナショナル・トラストとは


産業革命の結果、どんどん古ものが壊され新しものがつくられていく中、20世紀の初め3人の英国人が価値あるもの
を、後世に長く残すのを旨として非営利の組織ナショナル・トラストをつくりました。

今では、数百万人の会員と無償奉仕のボランティアの人達が、村や城、庭や海岸線に到るまで、自然に始まり歴史の
中で人のつくった価値あるものまで保存して行こうという大きな運動となっています。
英国の湖水地方にピーターラビットを筆頭に数多くの動物を主役にした童話を書いた、ベアトリックス・ポッターが住ん
だヒルトップの家があります。ポッターさんは、遺言で財産をナショナル・トラストに寄付しました。
ヒルトップの家の見学は、一日に入場出来る人数を決めていて、決して無理をして入れまん。長く大切に保存していくの
が目的だからです。年会費を払っている会員でも当日券が売り切れていれば、翌日以降に回されています。他のナショ
ナル・トラストでも同様の処置をしているようです。断られた会員も愚痴ることなく引き下がっていました。
ヒルトップの家の中は、自由に見て回るのですが、所々に係員がいて、質問に答えてくれます。話しかけた人達は、全
てボランティアでした。一人は日本人で、休暇を利用してわざわざ日本からやってきて、2週間奉仕している方でした。

こうして英国では、人々に支えられ素晴らしい遺産が、後の世の人に残されて行くシステム、知恵が確立しています。


252. アフタヌーン・ティーの始まりは


ビクトリア女王治世(1838〜1901)時代は、昼食(12時頃)と夕食(9時頃)との間が開きすぎていたので、小腹が空
くといった中、アフタヌーン・ティーを頂く習慣が上流階級で始まったようです。

スコーンにバターとジャムをぬり、別に各種のサンドイッチそしてプティケーキ(小さなお菓子)と共に紅茶をチャイナ(陶
器)で頂きます。今でも、ロンドン市内の有名ホテルや英国中で、郊外のマナーハウス(貴族、上流階級の田舎での邸
宅)ホテルなどで頂けます。

子供の頃頂いた3時のおやつとはレベルが違いました。


 253. ヨーロッパの薬局のマークは緑十字の中にヘビが


古代ギリシャ神話では、アスクレピオスは死者まで生き返らせることが出来たという。
ゼウス神に罰せられて、天空の星座となり蛇の形をしています。

トルコのイオニア海岸近く医学の神、アスクレピオスの遺跡を見学したことがあります。入り口には、蛇の模様のある柱
が立っていました。ガイドの説明では、当時は初診で助かる見込みのある人が、入院の許可を貰いました。入院する
と、単に薬や手術などの治療に留まらず、精神面からも治療をしていたそうで、壮大な遺跡には、図書館や劇場、暗示
にかけて自信を取り戻すための薄暗いトンネル状の道があり、そしてエーゲ海の景色が見下ろせる景勝の地にありま
した。

ヒポクラテスは、アスクレピオスの子孫にあたります。
コス島生まれで、この島には彼の治療した遺跡があります。手術に使用したメスやハサミなどが発掘されています。こ
の人は、"医者の誓い"という名文を書きました。この誓いは、現代の医者も大切にしています。またコス島の近くにあ
るニシロス島には、硫黄温泉があり、温泉を利用しての治療をした人でした。
蛇は一年に一度脱皮して、新たに出発する生きものです。そんなことも医学と結びついているのでしょうか?


254. 似たもの同志


イングランドの湖水地方の中で一番大きな湖は、ウィンダミアです。

この湖に面して、レイクサイドやボーネスの集落に、19世紀につくられた貴族の館(マナーハウス)や教会、ホテルがあ
ります。湖周辺で発掘された石炭や鉄鉱石を運搬するために鉄道や蒸気船がつくられました。20世紀になると、観光
資源として見直され、今では、夏ともなると英国は言うに及ばず、ヨーロッパ、世界各地から観光客が訪れる名所になり
ました。

産業革命は鉄道や蒸気船など交通革命でもありました。
カナダのバンフやレイクルィーズにも、立派な石造りのホテルがありますし、大西洋と太平洋をつなぐ鉄道敷設に伴っ
て19世紀につくられたものです。
景色の良い場所で温泉などわき出せば(事実バンフはそうです)文句ありません。同時代に英国人は、カナダや他の
支配した国々で本国の真似をした建設を着々と進めていたのですね。


 255. 無から有は生じないのたとえ


ベアトリックス・ポッター(1866〜1943)は、ロンドンの富裕な実業家の娘として生まれ、幼い頃からバカンスにはイン
グランドの湖水地方やスコットランドなどの、自然の豊かな避暑地へ、家族で旅をしたようです。

上流の家庭では、女性は学校に行くことはなく、家庭教師により教育や躾を受けました。ピーターラビットの話は、病院
で過ごす幼い家庭教師の子供に宛ててベアトリックスが書いた見舞いの手紙だったそうです。もともと彼女自身も絵心
はあったのでしょう。弟さんの描いた絵が彼女の住んだヒル・トップの家に残っていますがなかなかの出来映えです。
彼女の童話の背景には、イソップ物語(古代ギリシャ時代に書かれた)やシンデレラ物語、不思議の国のアリスなど小
動物が多く登場する子供向けの本に惹かれながら育った事があるようです。
ウォールト・ディズニーの描く世界なども同系統の流れをくむものだと思います。



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